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執筆者の写真rugsrang

ヤラメ絨毯の産地へ


 ヤラメの絨毯は主にイスファハン州の南部で織られています。イスファハンから車で1時間少々揺られ、産地として有名なタールホンチェとアリーアーバードへ行ってみました。どちらもごく小さな街で、アリーアーバードは街というより村に近い感じです。


 街の住民はペルシア系とトルコ系です。ヤラメ族はもっと山のほうの村に住んでいるそうです。この地方の絨毯は西から移住してきたカシュガイのグループの一つであるヤラメ族から広まりました。絨毯はペルシア系もトルコ系もヤラメ族も等しく同様の物を織っており、いずれもヤラメ絨毯として流通しています。


 初めに、タールホンチェの染織工房を見学しました。タールホンチェのようなごく小さい街で染織工房があり、染められたウールでその地域の絨毯が織られているのは現在では珍しいと思います。

訪れた時はインディゴによる染色が終わったところでした

染料とともに糸を煮る染色用の釜

 この工房は100%天然染料を使用しています。この写真はクルミの皮と茜の粉。明るい色の赤糸は茜染めです。

 そしてクルミの皮からの茶色を茜の赤とあわせて濃度を調節し、深紅から茶色の間の色合いの糸を作り出します。


 同様に色を組み合わせてさまざまな色糸が生み出されます。染色はとても均質です。左に積まれている染色前のウールは別の地方から仕入れているそうです。こちらは機械で紡がれています。

 画面左がこの工房の主、マーニーザーデ氏。とてもフレンドリーかつ丁寧に彼の工房を案内してくれました。



 工房を見学した後、マーニーザーデ氏とアリーアーバードのニヤーズアリー氏の案内で、タールホンチェの隣町、アリーアーバードへと向かいます。

 街の入口の看板には、「ようこそ、ヤラメ絨毯織りの里、アリーアーバード ジョンボゼへ」とあります。ヤラメ絨毯の本場と言えばアリーアーバードで、他のヤラメ産地よりも品質が高いことで知られており、私も期待が高まります。ちなみに「アリーアーバード」なんて地名はイラン中に数えきれないくらいありまして、ここのアリーアーバードの正式名称が「アリーアーバード ジョンボゼ」なのです。

 こちらも街の入口にあるヤラメ絨毯のオブジェ。ワイヤーでフリンジを作っているのが芸が細かいです。一方、前の写真の看板は鉄骨が横に飛び出したままなのですが、イラン人のこだわり所が相変わらずよくわかりません。

 マーニーザーデ氏は写真に入りたがりで、スマホを構える度に待て待てと言って半分無理やり自分を撮らせます。



 アリーアーバードのニヤーズアリー氏のお宅にお邪魔して、彼のお母さんに絨毯織りを実演してもらいました。

 ヤラメ絨毯は一般に水平式の織り機で織られています。水平式の織り機での絨毯づくりは腰の痛む大変な作業です。それを何十年も絨毯を織り続けてきたお母さん。デザインは完全に覚えていて、よどみなくパイル糸が経糸に結びつけられていきます。

 右がニヤーズアリー氏。こちらの青のザロニームを仕入れさせてもらいました。とても織りのしっかりとした素晴らしいヤラメでした(販売済み)。


ヤラメの6平米 イスファハンのバーザールにて

 タールホンチェやアリーアーバードなどの地方で織られたヤラメ絨毯はイスファハンに集まり、絨毯商によって洗浄や仕上げがなされます。今回の訪問先もイスファハンのヤラメ専門の絨毯商から紹介してもらいました。

 カラフルでかわいいデザインで知られるヤラメ絨毯もまた、とても地方色にあふれた魅力の詰まった絨毯でした。


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