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執筆者の写真rugsrang

現在のビージャールの絨毯づくり



ビージャール

 コルデスターン州北部のビージャールは人口およそ57,000人、クルド人が主に暮らす街です。絨毯界ではビジャーと呼ばれています。英語表記するとBijar ないしBidjarですが、「i」と「a」は長母音、「r」はペルシア語では巻き舌でハッキリと発声するので、ビジャーではなくビージャールです。ちなみにグーグルマップ上の日本語表記もビージャールとなっています。グーグルマップはまれに全然違う読み方になっていることもありますが、大体のイランの都市名は日本語でも違和感のない表記になっています。

 古くからクルド人の女性たちによって織られるビージャールの絨毯は丈夫なことで有名です。この地の産業としての絨毯づくりは19世紀のガージャール朝期に開花しました。この時代、イランの絨毯のデザインは輸出先である西欧の嗜好にあわせたデザインに変化していきます。西洋風の花々で飾られる現代のビージャールの絨毯のデザインは、ガージャール朝の時代から西洋の影響を受けながら形成されてきたデザインであるといえるでしょう。もちろんこれはビージャールに限らず、他産地も同じことであり、現代の分かりやすい事例としてはモダンインテリアに似合うようにデザインされたギャッベが挙げられると思います。

 ビージャールの街中には現在も中規模の工房がふたつあり、女性たちによって絨毯が織られています。



 ビジャーとして有名な六角形のメダリオンを持つマーヒー柄のデザインはビージャールでは織られていません。あれはアゼリー人の絨毯で、クルドのビージャールではご覧の通り花々を多く用いた柔らかで優しいデザインの絨毯が織られています。


 ハーディー氏が経営する工房にお邪魔しました。


 ノットはトルコ結び(対称結び)ですが、かぎ針を使わずに指先で一本一本結んでいきます。ハーディー氏いわく「トルコ結びはペルシア結び(片開きの非対称結び)と違い、経糸2本にそれぞれ1回ずつ完全にパイル巻き付けるので、頑丈である」とのこと。どちらが優れているのかはそれぞれ言い分が違うので、わかりませんが、トルコ結びの利点の一つにかぎ針を使ってパイルを結ぶことが出来るので、早く作業が進むというのがあります。しかし、この街で見学した両方の工房ともかぎ針を使わずに指先で結んでいましたので、他のトルコ結びの絨毯よりも織るのに時間が掛かっていることは確かです。

 ハーディー氏は自前の染色工房も持っているとのことで、そちらにも連れて行ってもらうことにしました。ハーディー氏には、ノンアポで飛び込んだにもかかわらず、案内や説明を大変親切にしていただきました。


 ハーディー氏とシールジャーン産のウール。イラン産ウールではシールジャーン産が一番柔らかく上質だそうです。

 ペルシア絨毯は輸入ウールで織られることも多いのですが、ハーディー氏の工房は国産(イラン産)ウールを使用しています。さらに一番の売りは昔ながらの方法で染められた100%草木染であること。


染色窯


染色窯

 いくつも並ぶ窯のひとつ。手作業でかきまぜながら、ぐつぐつと染料とウールを煮ています。


茜

 使用される染料。多分、西洋茜の粉末。


クルミ

 こちらはクルミの皮。黄色や茶色を出します。


 美しく草木染されたウールの束。

 ここまで見せられると、ハーディー氏の絨毯が欲しくてたまらなくなったのは必然なのですが、残念ながら在庫無し。主にドイツに売られていくことが多いそうで、柄もドイツで人気なモダンデザインもあったりするみたいです。つくっているのは6平米以上のサイズのみ。

 ハーディー氏の工房の絨毯にご興味のある方がいらしたら、直接問い合わせが可能ですので、ご一報ください。

 当ショッピングサイトで、ハーディー工房ではないですが草木染のビージャール産が1点在庫がございます。他にも日本ではめずらしい「本当に」ビージャールで織られた絨毯を販売しておりますのでご覧いただけたらと思います。


ビージャールのバーザール

ビージャールのバーザール。20年前大宮に住んでたよ!っていう人に声をかけられました。


サルヴァトアーバードの橋

ビージャール近郊サルヴァトアーバード村にかかるサファヴィー朝期に造られた歴史的な橋。


橋のアーチ

 異なるサイズの9つのアーチで構成されています。


絨毯を干していました。


 ビージャール北西40km付近の風景。広い大地が黄金色の小麦畑で覆われています。なんだかナウシカの「その者青き衣を纏いて金色の野に降り立つべし」のシーンを思い浮かべてしまいました。今年の小麦は大豊作だったそうです。

 実はこの付近のカムチョガーイ村に古い城塞跡があるというので車をチャーターして行ったのですが途中から車が入れない細い道になり、城跡までそこからミニバイクで1時間位掛かる、とのことだったので諦めてしまいました。残念。


この山々の先にカムチョガーイの城塞跡があるらしい。


小川の流れるきれいな所でした。

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